(目次)
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1. マリー・アントワネット
マリア・テレジア(オーストリアのハプスブルク家)の娘であり、
フランス国王ルイ16世の王妃である。
美貌を持ち、性格はわがままであったとされる彼女だが、
国家財政を傾かせる程の浪費家であったと言われており、
その豪華ぶりは民衆から反感を買うほどであった。
しかし、近年では彼女が国家を追い詰めるほどの
浪費家であったかどうかの証拠は残っていないとも言われている。
無実の詐欺事件として有名な首飾り事件など波乱万丈の人生を送り、
悲劇の王妃と言われた彼女に捧げるはずであった時計とは
いったいどのようなものなのか・・・
2. 工房を訪れた謎の人物
ある日、パリのシテ島にあるケ・ド・ロルロージュの工房へ
マリー・アントワネットの使者と称する謎の人物が訪れる。
そこで、宮廷時計師であるアブラアム=ルイ・ブレゲに対して、
王妃に捧げるための最高の時計を作って欲しい。
制作するための費用と時間に制限はない。
その代わりに、最高の技術を使った複雑機構を多く取り入れ、
かつゴールドを多く使った最高の時計を作って欲しい、
という依頼を出したのだ。
3. 制作から完成するまで
依頼を受けたブレゲが時計制作を始めてしばらくして・・・
貴族や聖職者などの特権身分の豪華な生活とは裏腹に
度重なる増税に苦しむ民衆、あげくの果てに小麦の不作による
パンの価格高騰により、民衆の怒りは最高潮に達していた。
そう、フランス革命の勃発である。
1789年のバスティーユ牢獄の襲撃をきったけに起きた
フランス革命により悪の根源とされた王妃はコンコルド広場にて、
ギロチンにより処刑され、この世を去る事になる。
王妃は処刑の際、恐怖している様子やや怯える様子も一切みせず、
凛とした姿勢であったと言われている。
王妃がこの世を去った後も、ブレゲは制作を続けるが、
そのブレゲ本人も完成前になくなってしまう。
ブレゲの死から4年後、
依頼から44年後の1827年に世界最高の時計である「No.160」
通称「マリー・アントワネット」は完成することとなる。
4. No.160 マリー・アントワネット
44年の月日を費やし、
あらゆる最高の技術と素材を用いた世界最高の時計と言われる
「No.160」には、次のような機構が搭載されている。
(主な機構)
- ペルペチュエル ※ムーブメントに用いる自動巻き機構
- ミニッツリピーター
- パーペチュアルカレンダー
- パワーリザーブ
- スプリットセコンド
- イクエーション・オブ・タイム
- サファイアを軸として使用
- 透明のクリスタル文字盤を使用
- 純金やサファイアを各部品に使用
いずれも現代の高級時計に多く取り入れられている
ものばかりです。
※制作時点では、トゥールビヨンは存在していません。
正確には、受注後しばらくしてからの発明であり、
超複雑機構であるトゥールビヨンを搭載するには、
ゼロからやり直す必要があったため搭載しなかった。
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5. 盗難とレプリカ
1983年にエルサレムの美術館から盗まれる事件が起きる。
ほどなくして、スウォッチグループのCEOである
ニコラス・G・ハイエックは、
ブレゲにレプリカの制作を依頼し、幻のNo.160の再現
プロジェクトが開始される事となる。
しかし、プロジェクトは困難を極めた。
なぜなら、古いデッサン資料ぐらいしか情報がなかったのだ。
パリ国立工芸学院ミュージアムなどの協力を得た事により、
再現を果たすことに成功する。
時計を収める化粧箱には、当時マリー・アントワネットの憩いの場であった
ヴェルサイユ宮殿のオークの木が用いられた。
このレプリカは今、ブレゲの本社に保管しており、
今後、販売する予定も2本目の制作予定もないとの事です。
ブレゲの最高傑作「No.160」は、
時計史上最も価値のあるものの1つとして数えられます。
これだけのドラマを織りなす時計は、
この先、二度と現れないかもしれません・・・
一生に一度はこの目で見てみたいものです。